「韓流ラブストリー 恋の糸」第38話

「韓流ラブストリー 恋の糸」(スカイプが繋ぐ恋 三十八話)
著者:青柳金次郎


先週末からソウルに来ていたジャンヨルも日本へと帰り、またいつもの毎日に戻った怜音は早朝、会社の前で待っているイルリョンに何時ものように挨拶をする。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第38


「おはようイルリョン!」
「おはようございます怜音さん、今日はなんだかご機嫌ですね――」
「そうなの、週末いいことあったからご機嫌なの……」
「そりゃ良かったですね、僕も怜音さんの沈んだ顔を見たくないから今朝はご機嫌です!」
「……ありがとうイルリョン。突然だけど今夜暇?」
「エッ? 勿論怜音さんのお誘いとあれば時間はあってないようなものです――」
「今夜何時ものメンバーで飲みに繰り出そうと思ってるの、どうかしら……」
「いいですねぇ、久しぶりですし――」
「じゃぁ決まりね。後からセヨンにでも連絡させるね――」
「了解しました!」
イルリョンはふざけながら敬礼をして怜音の笑いを誘った。
「それじゃ今夜ね!」
「ハイ、それじゃ――」
怜音は踵を返すとビルの中へと入っていった。それを見送りながらイルリョンも会社へと向かった。
「おはようセヨン、今夜久しぶりに行こうかぁ?」
「いいですねぇ、それじゃ早速みんなに連絡しときます。お店はどうします?」
「セヨンとナヨンで決めて。素敵なお店、期待してるわぁ――」
「そうかぁ……、じゃぁ今夜は何処にしようかなぁ……」
嬉しそうに考えるセヨンの顔を見詰めながら微笑む怜音だった。ここ最近自分の気持ちが沈みがちで、他のスタッフに気を使わせることが多かったことから今夜は逆にしっかりと労ってやろうと怜音は考えていた。
「そろそろ行こうかぁ、みんな?」
「おぉぉ、もうこんな時間かぁ……」
「そう、もうこんな時間……」
会社の窓にはもう夕星が映っていた。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第38


「室長! 行きましょう。さぁ今夜は飲むぞぉ!」
「よし! 今夜は飲もう!」
「さぁ、みんな行くわよぉ――」
「よぉ~し、今日は飲むぞぉ!」
「フンニ、潰れちゃだめよ!」
「何を失礼なことを……」
「そんなこと言って前回は潰れる寸前だったくせに――」
「違うよ、こないだはちょっと体調がすぐれなかっただけだ――」
「よーし、今夜は勝負よ! フンニ――」
「はいはい、分かったから早くかたずけていこうよぉ――」
「そうそう、ナヨンの言う通り、ところでイルリョンに連絡したわよね――」
「当然です!ちゃんと私が連絡しときました――」
「なんで俺じゃなくてイルリョンなんだよ――」
「本当になんで兄弟なのにこんなに違うのかしら……」
「セヨン、それは言い過ぎよ。ねぇ室長――」
「あのねぇ、日本では喧嘩するほど仲がいいって、昔からよく言うのよ――」
「なるほど……、セヨンとフンニがねぇ……、て、ことはイルリョンは私の物ね!」
「ナヨンぬけがけは許さないから……」
「きゃぁぁぁ、室長、セヨンの目が怖いでぇ~す――」
「もういい加減にしてよぉ、先に行ってるから――」
「待ってくださ~い、室長――」
久しぶりの飲み会にスタッフ一同、異常な盛り上がり方で楽しそうだった。怜音の顔も自然と緩んでいた。
「それでは皆さん、私セヨンが一番に一気飲みします!」
「えぇ~、セヨン乾杯まだなのにいっちゃうのぉ?」
怜音は思わずセヨンに言ったが、すでにセヨンの持ったソジュの入ったグラスは空になっていた。それを見たほかのスタッフ達も遅れてはならぬと次々にグラスを空ける。つられて怜音も後に続いた。
「ふぅ~、やっぱり仕事の後の一杯は最高ね!」
「室長、ずいぶん今回は深く沈んでいたみたいだったから……」
「エッ! 気が付いてたのぉ……」
「そりゃそうですよ、みんな分かってましたよ――」
「そうそう、室長はわかりやすいからなぁ――」
「どうもみなさんお気遣いいただきありがとうございます~ぅ、でも次回からそんな時はほっとかないで飲みに誘ってよぉ、これでも一杯一杯でやってるんだからさぁ……」
「分かりました。次回からは僕から誘わしてもらいます――」
「あらぁ~、イルリョン、私というものがありながら、それは無いんじゃないのぉ……」
「何言ってるのよぉ、ナヨン! 何時からイルリョンはあなたのものになったのよぉ、聞き捨てならないわ!」
「まぁまぁ、冗談ですよ!」
「イルリョンもおかしなこと言わないでよ――」
笑いながらそう答えた怜音はイルリョンに目を向けるとイルリョンも笑顔で返してきた。怜音はこんなに楽しい時間が永遠に続けばと思った。しかしそう思った瞬間、怜音を呼ぶ声がした。
「怜音さん、今日は随分ご機嫌のようね――」
「…………」
みんなが囲むテーブルの前に、仁王立ちして睨み付けるサミンの姿が怜音の視界に入った。
「あぁぁ、貴女は……」
「サミン! どうしてここへ?」
「イルリョンあなたには関係ないことよ!」
突然現れたサミンの顔は鬼の表層で怜音を睨み付けている。その表情の意味が分からない怜音は戸惑いながらサミンを見つめ返した。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第38


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