「韓流ラブストリー 恋の糸」第37話

「韓流ラブストリー 恋の糸」(スカイプが繋ぐ恋 三十七話)
著者:青柳金次郎


「おはよう怜音、はぁ~よく寝た。久しぶりだなぁこんなに眠れたの――」
「おはよう、アミ。よく寝てたわねぇ」
アミは首を回しながら軽いストレッチをしている。
「ところで怜音、今何時?」
「あぁ、今14時を回ったところよ――」
「えっ! やばい! 帰んなきゃ仕事だ!」
「えぇ~、今日仕事なの? しかもこんな時間に?」
「そうなのよ、こんな時間に予約が入るのよ最近――」
「で、何時からなの?」
「15時30分から――」
「急がないと、間に合わないじゃない。朝ごはん急いで作るわ!」
「あぁ、せっかくだけど今日はいいわぁ、帰ってお化粧もしなきゃいけないし……」
「えっ? アミって講義の時って化粧なんてしてたっけ?」
「フゥフゥフゥ~、ちょっと訳ありでね――」
「えぇぇ、まさかぁ……」
「そう、そのまさかなの……」
そんな会話で怜音はアミに彼氏らしき存在がいることを知る。
「アミ、どんな人なの? 日本人なの? 優しい人? ねぇ、教えてよぉ――」
「まだそんなんじゃないのよ、そうなったらちゃんと紹介するから、早まって兄貴になんか話しちゃだめよ!」
「なんで? いっちゃだめなの?」
「ダメ! 自分のことは何も話さないくせに、私の事は平気でずけずけ聞いてきて、ああだこうだとうるさいんだから!」
「そうなんだぁ……」
「怜音、絶対だめだからね。約束だよ、ちゃんとお付き合いしだしたら怜音に一番に話すから、兄貴や親父には絶対にいっちゃだめだよ――」
「分かった分かった、約束するわ――」
そういうとアミは急いで怜音の家を後にした。そんな感じで怜音の休日はあっという間に過ぎていった。
(そうかぁ、アミにも彼氏ができたんだぁ……)
怜音はアミの帰った後、久しぶりに街をぶらぶらと散歩に出かけ、気分転換をした。散歩の帰りにEマートによって買い物を済ませ自宅へと戻った。対して何をやったわけではなかったが怜音の心の中にあったもやもやは消えてなくなっていた。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第37


そんなこともあってか気分のいい怜音は、オレンジ色の夕日を受けながらちょっと早い夕食をとる。夕食と言ってもシャブリにEマートで買ったカリカリのバケットと野菜サラダ、それにお気に入りのミントドレッシングをかけただけのものだがこの組み合わせは怜音のお気に入りだった。
(あぁぁ、夕日がきれいだなぁ……)
オレンジ色から真っ赤に夕日の色が変化してゆき、やがて夕星が輝き出したと思うと、すぐに日は暮れて、あたりはすっかり暗くなった。ただ真っ赤な太陽が暮れた後、空にはたくさんの星たちがにぎやかに輝き出した。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第37


(あぁ、今度はお星さまかぁ、綺麗だなぁ……)
シャブリのフルボトルも残るところ3分の1ほどになった時、怜音の瞳は静かにゆっくりと閉じた。
「ピンポ~ン」
「ハァ! あれだろう? あれ? 寝ちゃったんだぁ私……」
「ピンポ~ン」
「あぁ、いけない! ハァ~イ」
「ハァーイ、怜音!」
「ああぁぁ、ジャンヨル! どうしたの?」
怜音は驚きながらもジャンヨルの胸の中へともぐり込んだ。
「ソウル本社で会議があってね。三日間はこっちにいるから泊めてね――」
「ウソ? 本当? 最高!」
「怜音、それより何か食べるものある? お腹すいちゃって……」
「どうしたの?」
「今朝から忙しくて何も口にしてないんだぁ……」
「分かった。じゃぁ一杯飲みながら待ってて! すぐに何か作るから――」
「サンキュー!」
ジャンヨルにハイトビールを手渡すと怜音は急いで料理を始めた。
(なんだか今日は素敵な一日だなぁ……)
「ジャンヨル、できたわよぉ、さぁどうぞ!」
「ウヮァァ、美味しそう!今日は何時もに増して力入ってるって感じだね――」
「ふふぅぅ~、今日はなんだか気分がいいの――」
「なに? 何か良いことでもあったの?」
「そう! あったの……」
「なに? 何があったの?」
「へぇぇ~ん……」
「教えてよぉ、怜音――」
「それはねぇ、ジャンヨルがきてくれたから!」
「えぇぇ、それだけ……」
「そう、それだけ! でも私にとっては、そのそれだけが最高の事なの――」
突然のジャンヨルのソウル出張は、怜音にとって神様が暮れたご褒美のように思えてならなかった。ここ最近不安な日々を一人で過ごしていた怜音にとって、昨日からのアミとジャンヨルとの時間は最高のひと時になった。
「昨日ね、アミが遊びに来てくれたの、一人で私が淋しいだろうって――」
「アミがきてたの?」
「うん、なんだか最近色々と心配事が多くて……」
「なに? 心配事って?」
「ほら、サミンって人……」
「あぁぁ、そのことね。実は俺も少しウンザリしてるんだぁ……、何度言っても分かってくれなくてねぇ……」
「そうなんだぁ……」
「うん……、オッといけない! くだらないことでせっかくの二人の時間が台無しになってしまうところだった――」
「やめよやめよ! 楽しい時間にしよう。二人の限られた時間は二人の為にね!」
「そうね、二人の為にね!」
突然のジャンヨルの訪問で素敵な週末になった怜音の気持ちはすっかり元通りになっていた。

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