「韓流ラブストリー 恋の糸」第36話

「韓流ラブストリー 恋の糸」(スカイプが繋ぐ恋 三十六話)
著者:青柳金次郎


(はぁ~、最近ジャンヨルからのコールが鳴らないなぁ……)
ここ数日スカイプにジャンヨルからのコールが鳴らない怜音はちょっと不安な気持ちになっていた。それというのもあの日、怜音の前に突然現れたサミンの存在が大きく関係していた。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第36


(もしかして……、ジャンヨル顔を見せて……)
その頃ジャンヨルはやっとのことで仕事が片付き会社を出たところだった。
「ジャンヨル! 今終わったの?」
「えっ?」
「お疲れ様、食事でもしない?」
「あぁ、サミン……、悪いが疲れてるんだ、悪く思わないでくれ――」
ジャンヨルはそういうとサミンに背中を向けた。サミンは何も返さずジャンヨルの背中を見詰めて見送った。
その夜ジャンヨルは家に帰ると冷蔵庫の扉を開き、ハイトビールを取り出しプルタグを抜くと,急ぐようにPCの前に腰を下ろすと怜音へコールした。時間はゆうに0時をまわっていた。
「怜音、こんな時間にごめん、仕事が忙しくて今帰ったんだ――」
「ううん、いいのよ時間は……、あなたの顔が見えただけで私は幸せよ――」
「ありがとう、怜音。最近よく思うんだ、仕事がなければなぁ、て、態々離れて暮らすこともないのに、いっそのこと結婚しちゃおうか? 怜音……」
「……そうね、私もそう思うわぁ、でもジャンヨルはそれができる? 私もミッコ先輩を裏切るようなことはできない……」

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第36


「……そうだよなぁ、俺もそう思うよ。ただいつまで続くんだろう、と思うんだ……」
「ジャンヨル……、でも嬉しいわ、そんなふうに言ってくれて、私もいつも一人で不安だから……」
ジャンヨルは怜音の想いを聞くといてもたっていられなくなり、手にしていたハイトビールを口にすると、やり場のない想いを何処かへ流してしまうかの如く、ビールを一気に流し込んだ。
PCに映るそんなジャンヨルの姿を見た怜音は、ジャンヨルも自分と同じ心境なんだという事を知り、少し安心できた。ただ変わることのないこの状況を想うとその安心感もスーッと、どこかへ消えてしまった。
「…………」
「…………」
怜音は窓の外見た。何時もなら夜空に輝きながら語り掛ける星たちも、今夜は雲に覆い隠されその姿を見せることはなかった。
(ジャンヨル……、あなたの傍にいたい……)
(怜音、一日も早く君と一緒に暮らせるように……)
二人の想いは同じだった。しかしその想いの間には何時も目には見えない分厚い壁が二人の想いを阻んでいた。
「おはようございます。……どうしたんですか?」
「あっ、おはようイルリョン、何でもない……」
「でも……」
何時もの様に早朝イルリョンは怜音を迎えたが怜音の目には光るものが零れそうになり、瞳は真っ赤に充血している。昨夜、怜音は一晩中眠ることができず、泣き続けていたのだった。
「怜音さん――」
イルリョンは怜音の手を取るとグッと引き寄せ優しく抱きしめた。怜音は力なくイルリョンの胸の中に顔をうずめた。すると怜音の瞳は堪えていたものが一気に吹き出すように流れ落ちた。怜音は一人で立っていられないほどの脱力感に襲われ堪らずイルリョンにしがみつく。
「イルリョン、私……、ジャンヨルに会いたい――」
「…………」
「ごめん――」
怜音はスーッとイルリョンの腕の中からすり抜けると踵を返すとビルの中へと走り出す。
「怜音さん……」
(ごめんイルリョン、あなたに甘えちゃいけないのに……)
怜音はビルの中へと駆け込んでいった。
「おはようございます。室長――」
「おはよう! きょうもよろしくね!」
怜音は会社に入った瞬間にスイッチが入り、ついさっきまでしょげていた怜音とは全く違う怜音に変わっていた。
「はぁ~、終わったなぁ今日も……」
怜音は仕事を終えると家路へと向かった。途中マートにより買い物をして三日分ほどの食材を買った。そして自宅へ帰るとPCのスイッチを入れる。するとスカイプに着信が入っていた。アミからだった。怜音は一旦荷物をかたずけ、アミにコールする。
「アッ、アミ、どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ、怜音最近全然連絡ないから心配したのよ。元気にしてるの?」
「うん、今のところは大丈夫だよ。でもなんだか日本が恋しくなってきちゃって……」
「それ日本じゃなくて兄貴がじゃないの?」
「まぁね……、て、何言わすのよ、もう!アミの意地悪!」
「やっぱり図星かぁ、兄貴が心配してて私に怜音に電話してやってくれって、自分ですればいいじゃん、って言ったんだけど、俺がするとどうも最近暗くなっちゃうからだって、見せつけてくれるわぁ、まったく――」
「ごめんね、アミ。私のせいで……」
「あぁ、そういう意味じゃないから大丈夫大丈夫、私は怜音の親友だから、全然気にしないで――」
「ありがとう、でも本当にジャンヨルの言う通りなの、二人で話していると最近なんだかすぐ切なくなっちゃって……」
「もう結婚しちゃえば、スッキリするわよ――」
「そうしたいんだけど、仕事がねぇ……」
「そんなの辞めちゃえばいいじゃない。兄貴の稼ぎで十分食べていけるでしょう――」
「そうじゃなくてさぁ、お互いに責任ある立場だからさぁ、簡単にいかないのよ――」
「だからそんなの辞めちゃえばいいじゃない――」
「アミが羨ましい。ところでアミはまだK-アカデミーで働いてるの?」
「働いてるわよ、私にはああいう仕事があってるみたい――」
「思い出すなぁ、アミと初めてスカイプで話した時の事……」
「そうね……、でもあっという間ね!」
「うん、そうだね。アミ、せっかく近くにいるんだからもっと会ってよ――」
「私は何時でも大丈夫よ。怜音の方が忙しいんじゃない。これでも気を使ってるのよ。私だっていろいろと悩みもあるし、だれかと飲みたい気分になるときだってあるのよ――」
「ねぇ、アミ、じゃこれから家で飲まない! 今夜はそのまま泊まってけばいいんだし――」
「簡単に言うわねぇ、まるで私が暇人みたいじゃん――」
「ダメ? いいけどぉ、実は私の暇しててさぁ怜音と飲みたかったんだぁ――」
「なんだぁ、早くそう言ってよ。じゃぁ網が来るまでに酒盛りの準備しとくから! お酒は何がいい? ワインにビールにソジュに日本酒、ウィスキーにブランデェ―、シャンパン、なんでもあるわよ」
「流石は酒飲み怜音だけあるわねぇ、揃ってるじゃない。じゃぁそうと決まればすぐに行くから、準備しといて! なんだか気分がハイになってきたぁ、飲むぞぉ~」

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第36


一気にアミとのやり取りで怜音も気分がハイになり、怜音は急遽決まった女二人の飲み会の準備に取り掛かかった。そしてその夜の飲み会は朝方まで続くのだった。


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「恋愛小説」

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