「韓流ラブストリー 恋の糸」第35話

「韓流ラブストリー 恋の糸」(スカイプが繋ぐ恋 三十五話)
著者:青柳金次郎


怜音の心の中には少しずつ黒い霧のようなものが立ち込めていた。
(ジャンヨル……)
ジャンヨルの心の中にも、この先に待ち構える暗闇を感じずにはいられなかった。
(怜音……)

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第35


「おはよう、イルリョン……」
「おはようございます。怜音さん――」
翌日イルリョンは何時も通りに怜音を待っていた。
「怜音さん、この先、何があろうと僕はあなたの傍にいます。いいですね、そのことを忘れないでください――」
イルリョンの意味深な言い方に、怜音は首を傾げながら何を言っているのかわからずにいた。
「…………」
怜音はイルリョンに微笑を向けると踵を返した。

                     *

「おはようございます室長!」
「おはよう、今日って何か予定って、入てたっけ……」
「あっ、えぇ……、特には何も入っていませんねぇ……」
「そう、今晩行く? セヨン……」
「いいですよ、でもぉ室長、何かあったんですか?」
「えっ? 何かって……」
「室長は本当にわかりやすいんだから、顔に書いてありますよ――」
「えっ、本当……」
セヨンにそう言われた怜音は、自分の顔を触りながらニンマリとしてセヨンに答える。
「ちょっとね……、いや、ちょっとじゃないかも――」
「わかりました、行きましょう。みんなに声かけておきます――」
怜音の心の中で複雑にもつれ合った不安な気持ちはセヨンに悟られていた。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第35


「おつかれさまぁー、コンべー!」
「コンべー!」
今夜もいつものメンバーがそろった。勿論イルリョンもいる、怜音はみんなの顔を見ながら笑みを浮かべグラスを傾ける。
「室長、今日は変ですよ。考え込んだりして――」
「そういえば今日はため息ばかり吐いてましたねぇ」
そんな問いかけに怜音は笑みを浮かべて答えた。
「そんなことないわよ、なにもないわ!」
イルリョンが怜音の顔を見詰めている。
(怜音さん……)
怜音の心は揺れていた。
「とにかく先ずは飲みましょう! 先ずは私が行きます――」
そういうとグラスを勢いよく空けたのはセヨンだった。するといつものようにナヨンがグラスを空ける。イルリョンも何時もの様にグラスに並々とソジュを注ぎ、勢いよく空けた。怜音も躊躇いながらグラスを空けた。胃袋の中がじわじわと熱くなるのを感じた。
「よーし、もう一杯いきます――」
イルリョンが怜音に続くようにグラスに注いだソジュを空ける。それを見たナヨンとセヨンも同じようにしてグラスのソジュを空ける。
怜音も続いた。フンニも負けずとソジュを空ける。気が付くとみんなの顔に笑顔が零れていた。
「あ~ぁ、美味しいなぁ。やっぱりお酒はいいなぁ」
「本当だね、ナヨン。私もなんだかブルーだった気持ちだったんだけど、ドンドン気持ちがハイになっていくわぁ――」
「良かったぁ、怜音さんの気持ちがこのまま沈んだままだったらどうしようかと思いましたよ――」
イルリョンがホッとした様子で話すと、怜音がお酒のせいかイルリョンに抱き着くようにしてイルリョンの腕にしがみつく。するとそれを見たセヨンとナヨンが声をそろえて横槍を入れる。
「室長、ダメですよ。彼氏がいるのにイルリョンわぁ,私達のものなんですからね!」
イルリョンは顔を赤らめながらまんざらでもない様子だった。
「イルリョン、なんでじっとしてるのよ。室長から離れてよ!」
「そうよ、どうせ後で後悔するんだからぁ、室長はジャンヨルさんのものなんだからね!」
ジャンヨルの名前を聞いた怜音は反射的にイルリョンの腕から離れた。
「もう、君たちがよけいなことを言うから……」
怜音は正気に戻った。そして怜音は一瞬でも自分を見失った自分を恥じた。
「そろそろおひらきにしましょうかぁ、みんな今日は飲みすぎでしょう」
「はぁ~、今日はおひらきかぁ……」
「怜音さん、僕が送っていきましょう――」
「ちょっと待ってぇ、私達も付いて行くからぁ……」
「えぇ~、来なくていいのにぃ……」
「イルリョン、私達、たった今から室長の親衛隊になるから、よぉ~く覚えといてね――」
「裏切者は次から呼ばないからねぇ――」
「そんなぁ、分かりましたよ。一緒に送っていきましょう――」
「最初からそう言えばいいのよ――」
イルリョンは苦笑いを浮かべながら二人を見た。怜音はかなりお酒に酔ったのか、一点を見詰めながらじっと突っ立っている。
(はぁ~、ジャンヨルのバカ! なんで近くにいないのよぉ……)

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第35


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