「韓流ラブストリー 恋の糸」第32話

「韓流ラブストリー 恋の糸」(スカイプが繋ぐ恋 三十二話)
著者:青柳金次郎


「ジャンヨル……、私……」
あまりにも予期せぬことに怜音は戸惑いを隠せなかった。それは他の皆にも見て取れた。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第32


「ごめんよ、怜音。隠すつもりはなかったんだけど……」
ジャンヨルにはそれなりの言い分があった。自分の立場を明かした瞬間、いつも相手の女性の目の色が変わるのが嫌だった。自分よりも自分の立場と付き合おうとする女性ばかり見てきたせいか、女性と付き合う事にうんざりしていたのだった。そこにまったくお互いの立場など気にすることのなく接してくれる怜音が現れ、ジャンヨルは自然にそんな怜音に引かれていったのだった。それ故に自分の立場を明かすのをためらっていた。
「怜音、落ち着いてね――」
「ハイ、分かってます――」
怜音は冷静だった。しかしその冷静さがジャンヨルに対する想いの変化を表していた。
「怜音さん、すまなかったねぇ、ジャンヨルを許してやってほしい――」
「大丈夫です社長、最初はちょっと驚きましたけど……」
食事会はその後、無事に何事もなく終わった。怜音は最初の予定通りジャンヨルの家へとジャンヨルと一緒に向かった。帰りのタクシーの中でジャンヨルは何度も誤った。
「ジャンヨルもういいってば、分かってる。あなたの気持ちは……」
怜音の中でジャンヨルの言いたいことはちゃんと理解していた。だからジャンヨルを責める気持ちもなかった。だが怜音の心の奥底に何か今までにはなかったものが存在するのを感じた。
「ジャンヨル、愛してるわ!」
「怜音、僕も愛してるよ、いつまでも一緒だよ――」
二人は熱い夜を過ごした。そして翌朝怜音はソウルへと再び向かった。
「お疲れ様です。どうでした、久しぶりの日本は――」
「エッ、特にどうこうという事はないわよ、それに仕事だから……」
「そうですかぁ……」
「ところでこっちは変わったことはなかった?」
「あ、はい、こっちは何もありません。何時もと一緒です――」
怜音は何故か苛立っていた。それはセヨンにも伝わっていた。ただその理由が何なのかは怜音にもわからなかった。
その夜、久しぶりにスカイプにアミからのコールが鳴った。
「久しぶりアミ、どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ、怜音、会ったんだってうちの父親に……」
「ええ、会ったけど、そういえばアミのこと心配してたわよ。連絡してないんだって?」
「はぁ~、私はあの人のことが大っ嫌いなの、いつも仕事仕事で母親の危篤の時も仕事に夢中で母をほったらかしにして……」
「そうなんだぁ、色々あるんだ……」
「まぁね、だけど怜音、兄貴のことだけは信じてあげて、あんな立場にいるせいで色々と見なくてもいい女の嫌なところをさんざん見せられてきて、一時は女性不振に陥ったこともあったのよ。だけど怜音に出会って兄貴は昔の兄貴に戻ったの、だからお願いだから兄貴の傍にいてあげて――」
「大丈夫よ、そんな心配しなくても、私は今まで通りだから――」
「本当に?」
「本当に!」
「よかったぁ、もう二度と兄貴が悲しむ姿を見たくないの、私……」
怜音は思った。まだ自分の知らないジャンヨルの過去があることを、そしてそれが何なのかが気になった。

「セヨン今日久しぶりのどう?これ!」
怜音はグラスを傾けるふりをした。
「勿論、OKですよ。じゃ皆に集合掛けておきます――」
怜音はここのところもやもやした気持ちでいっぱいだったこともあり、久しぶりに飲み明かしたかった。
「それでは、コンべ!」
「コンべ――」

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第32


今夜もいつもと同じメンツが集まった。ラバーズソウルのスタッフ4人とイルリョンを含めたいつのメンバーの飲み会だった。
「室長、久しぶりで美味しぃ~、一人でうちで飲むソジュはしらけて酔う事も出来ないけど、こうしてみんなと一緒に飲むソジュは最高!」
セヨンは久しぶりの飲み会に喚起し、グラスを空ける。するとナヨンが負けまいと一息にグラスを空けた。
「おぉ~、お二人さんなかなかやりますねぇ、それでは俺も――」
イルリョンも負けまいと、一気にグラスを空ける。その後は何時もと一緒で各人がそれぞれのグラスにソジュを並々と注ぎ一息に空けていった。
「ところで室長、こないだの日本での会議って何だったんですか?何か難しいこと言われたんですか……」
「えぇ、あぁ、大したことじゃないわよ、心配しなくても大丈夫。仕事の方は順調です――」
「あれぇ、仕事の方はってどういうことですか? 室長――」
「えぇぇ、そんなこと言った、私――」
「言いましたよ、私この耳でちゃんと聞きました――」
セヨンはお酒のせいもあってズバズバといろいろ聞いてくる。怜音は最初は軽く流していたのだが、しまいにセヨンだけではなく席についている全員が同じようにあれこれと聞いてくるのにウンザリして、思い切って隠さずすべてを話した。
「そそそれって、本当ですか……」
「すみません! 室長、知らずに私達よけいなこと聞いてしまって――」
「いいのよ、隠すことじゃないし、それに私も誰かに話したかったんだ。黙っているとなんだか苦しいのよ――」
「…………」
みんなは一気に酔いが覚めたように静まり返った。
「あら? どうしたのみんな……、なんで黙っちゃうの――」
「だって室長、これから先どうなっちゃうんですか?」
「なにが?」
「エッ、室長……、知らないんですか?」
「だから何を?」
「日本サムスンが三星ジャパンを吸収合併するってこと……」

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第32


「知ってるわよ。それがどうしたの?」
フンニが堪らず口を開く。
「三星ジャパンの社長令嬢と日本サムスンの後継者との政略結婚の話がひそかに進んでいるという話、韓国では知らない人はいないくらい有名な話ですよ――」
「……嘘、本当に……」
「うん、本当に!」
怜音以外のメンバーは揃って頷いた。
「うそぉ~、じゃ私は何なの?」
とんでもないことが発覚する。怜音の気持ちは大きく揺れ動く。

☆前話を読みたい方へ☆
「恋愛小説」

この記事を書いたのは……

support事務局先生

>> support事務局先生の紹介ページへ
▼ この記事を読んだ人は