「韓流ラブストリー 恋の糸」第29話

「韓流ラブストリー 恋の糸」(スカイプが繋ぐ恋 二十九話)
著者:青柳金次郎


「乾杯~ぃ、飲もう!」
「よぉーし、飲むぞぉ、今夜わぁ――」
ラバーズソウルのスタッフ達は日頃のストレスを発散するべく高々と声を上げた。怜音も勿論その輪の中にいた。そして怜音の向かいに座っているのはイルリョンだった。その脇にセヨンとナヨンがイルリョンを取り合うように座っている。イルリョンはそんなことなど気にも留めない様子で怜音を見詰め優しく微笑む。怜音は軽く愛想笑いを浮かべてグラスを傾け軽く一杯目のグラスを空けた。それを見たフンニが怜音のグラスにソジュを注ぎ氷を入れて手渡した。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第29


「ありがとうフンニ、ごめんね、男性にお酒なんか作らせちゃって――」
「とんでもない、室長のお酒なら何倍でも作りますよ。さぁ今夜は飲みましょう――」
そういうとフンニは自分のグラスを軽々と空けた。
「ふぅ~、美味いなぁ、最高だよ!」
それを見た向かいに座る三人もグラスを掲げる。
「よ~し、私も飲むぞぉ!」
まずはナヨンがグラスを空ける。すると続いてセヨンもグラスを空けた。それを見たイルリョンがグラスにソジュをなみなみと継ぎ足し、見ていろと言わんばかりになみなみに継いだソジュを一気に開けた。それを見た怜音は韓国人の酒の強さと酒好きに本当に感心するのだった。そしてもう一人自分の傍にいる、酒好きで酒の強い男、最愛のジャンヨルの顔が頭に浮び思わず微笑んだ。その怜音の微笑みを見逃さなかったセヨンが怜音を冷やかす。
「室長、また彼のこと考えていたでしょう。う~ん、羨ましいぃ~」
そういうと隣に座っているイルリョンの腕にしがみついた。
「ちょっと、セヨン私のイルリョンに触らないで!」
ナヨンがイルリョンにしがみつくセヨンの腕を払おうとするとセヨンがナヨンとイルリョンを取り合いながらテーブルの雰囲気どんどんは盛り上がっていった。そしてお酒も進み全員の顔が火照り顔が赤らめた頃、イルリョンが宣告する。
「皆さん、聞いてください。僕は怜音さんが大好きです。愛してます!」
「…………」
それを聞いたラバーズソウルのメンバーは唖然とする。セヨンとナヨンはあまりにも予期せぬイルリョンの宣告に開いた口が塞がらないといった感じで顔を見合わせた。
「なんでぇ~、セヨン?」
「そんなの分かんないよぉ~、ナヨン、とにかく私達お呼びじゃないってこと?」
「あぁ~セヨン、私、もうダメ……」
「私も……」
酔っていた二人はすっかり酔いが覚めたようだった。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第29


「室長、どういうことですかぁ……」
「どういうことだろう……」
「イルリョン、なに言ってるのか分かってるのか?」
「分かってるよ、兄さん!」
「…………」
イルリョンのいきなりの告白に全員が黙った。怜音も驚きのあまりどうしていいのかわからないといった表情を浮かべた。しかし狼狽えながら何かを思い出したように立ち上がるとテーブルを囲む全員の顔を見て告白する。
「私はジャンヨルが大好きで、死ぬほど好きで……、とにかく私はジャンヨルが好き!」
今度は怜音のいきなりの告白に全員が驚いた。しかしそれを聞いたセヨンが後に続く。
「私はイルリョンが好きよ、死ぬほど好き!」
セヨンの告白に反応したナヨンも、自分も出遅れてはならないと告白する。
「ちょっと待ってぇ――、私もイルリョンが大好き、死ぬほど好き!」
セヨンに続きナヨンまでもが大声で告白する。一人残されたフンニは四人の告白に何が何だか分からず、立ち上がっている四人の顔を見ながら首をかしげブツブツとぼやいた。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第29


すると店の中から声援が上がる。
「頑張れよ、兄ちゃん、モテモテだなぁ――」
「オネェちゃん達も頑張って大好きな彼氏をモノにしろ!」
「いいぞ、いいぞ! ヒュー、ヒュー」
店の中にいた客たちがみんな立ち上がって拍手を送る。その状況に気付いた四人はやっと正気に戻り、それぞれが顔を赤らめながら俯いてしまった。そして五人は恥ずかしさのあまり急ぐようにして店を出る。
「怜音さん、あなたに彼氏がいようと僕の気持ちは変わりません――」
「イルリョン、あなたが室長のことが好きでも私の気持ちは変わらないわ――」
「イルリョン、私もよ、あなたの心が室長に向いていても、私はイルリョンを愛し続けるわ――」
三人の告白を聞きながら怜音だけは豪いことになってしまったと、三人の顔を見ながら心穏やかではなかった。
(まずいことになったなぁ、どうしよう……)

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