「韓流ラブストリー 恋の糸」第18話

「韓流ラブストリー 恋の糸」第18話
著者:青柳金次郎


エレベーターはビルの十八階で止まった。
ドアが開くとセヨンは怜音を導きながら先へと進んだ。
その階には幾つかの会社が入っていて廊下を挟んで幾つかのドアが並んでいる。
その階の一番奥にあるドアをセヨンは開けて中へと入った。怜音もそれに続いて中へと入る。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第18


「おはようございます。室長!」
「…………」
怜音は一瞬ボーっとしてしまい挨拶を返すのが遅れる。するとセヨンが怜音に挨拶をしてきたスタッフの名前を紹介した。
「室長、彼はフンニです。ラバーズソウルのチームリーダーです」
「初めまして怜音です。よろしくお願いします……」
「こちらの女性がナヨンです。IT業界にかなり詳しいです」
「よろしくお願いします。怜音室長!」
 怜音は全員に当たり障りのない言葉で返す。するとセヨンが怜音を促すようにして部屋の奥を指して言う。
「あちらが室長のデスクです――」
 怜音はセヨンに言われた方に目をやるとグレーのブラインドが下がったガラス張りの部屋が目に入った。その部屋へと向かった怜音は部屋の中へと入る。
そこには大きなデスクが置いてある。その前にはソファーが置かれ50インチはあるだろうかかなりの大きさの液晶テレビも設置されている。
怜音は東京の自分のデスクとは全く違うのに驚かされる。
「あれが私のデスク?」
「ハイ、何処かご満足いかない処がありますでしょうか……」
「とんでもない。最高です」
 怜音は驚いたデスクもPCも全てが当然だが新品で最高のモノであしらわれていた。
(すごいなぁ、でもプレッシャーだなぁ……)
怜音は取り敢えず室長ルームに入ると鞄とその他に持ってきた荷物をソファーにおいてもう一度部屋の外に出てみんなを集めた。皆と言ってもどうやら自分を入れて四名しかいない。
東京とは全然違う。しかし少数精鋭のこのラバーズソウルを何としても軌道に乗せ一日でも早く売上利益を出していかなくてはならない。
怜音は昔、ミッコがラバーズを起こしたばかりの頃を思い出していた。
怜音が入社した頃、丁度こんな感じの会社だった。スタッフも当時大学の先輩三人と自分を入れた4人で、初めはたいして売上もパッとしなかったが何故か雑用のような仕事はたくさんあって、みんな夜更けまでたいして売り上げにもならない仕事をひたすらやっていた。
あの頃の記憶がよみがえり懐かしくも思いながら、これから大変な日々が始まることを自覚した。
「初めまして山下怜音です。今日から室長としてみなさんと一緒にこのラバーズソウルで仕事していくことになりました。よろしくお願いします。韓国語は今の処まだ完璧ではないので皆さんには不自由を掛けると思いますがご協力ください」
 スタッフから拍手が起こった。そしてスタッフ一人ひとりが自己紹介を日本語で行った。三人のスタッフは皆日本語を流暢に話し自己紹介を済ませた。
男性一人に女性が二人、怜音は三人が三人ともそれぞれ個性的で仕事へのポテンシャルを秘めている事を感じた。
「室長、三番に社長からお電話が入ってます」
「どう怜音? 驚いたでしょう。かなりその三人のスタッフは出来るからあなたの力になる事間違いなしよ」
「ハイ、ありがとうございます。しかしビックリしましたよぉ、いきなり室長と呼ばれたときは、思わず後ろふりかむいちゃいました」
「ハッハッハァー、ごめんごめん驚かせて、ちょっと冗談がきつかったかぁ」
「きつすぎますよ、でも頑張ります。昔のミッコ先輩のように……」
「うん、怜音なら必ずそう言ってくれると思ってた。私の目に狂いはなかったわ、頑張ってね、期待してるわよ――」
「ハイ、頑張ります」
「あと明後日そっちへ行った時に話すけど、日本S社の企画部から新たに提案案件が出たから、そのことでミーティングするからスタッフ全員に午後からの時間を空けとくように伝えといて、忙しくなるわよ。怜音!」
「エッ、何なんですか? その新たな案件って――」
「それは私が行ってからのお楽しみ。悪い話じゃないわ……」
 怜音はミッコの嬉しそうに話す新たな案件という言葉が気になった。そしてミッコとの電話を切った後、スタッフの処へいって明後日の午後の予定を開けておくように伝えた。
その日はなんだかんだで、あっと言う間に時間が過ぎ仕事を終えた。
そして怜音は三人のスタッフに誘われて自分の歓迎会を開いてくれると言う。怜音は三人のスタッフと共にで四人でソウルの夜の街へと繰り出した。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第18


「よろしくお願いしま~す。コンベ!」
「コンベ?」
「ええ、コンベ! 乾杯です」
「ああぁ、そうだったね。ゴメンまだ馴れなくて……」
「大丈夫ですよ怜音室長、そんなこと」
「そうですよ。今日は飲みましょう」
「そうだね、飲もう。仕事の後のこの一杯は何処で飲んでも堪らないのよねぇ、フ~ゥ美味い!」
「怜音室長、私達みんな室長の為に頑張りますからね。よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくネ!」
 素敵なスタッフに囲まれた怜音は幸せだった。そしてこれからこのスタッフ達とならやっていけると思った。
そして何度となく続くコンベは夜更けまで続き、何度もグラスをぶつけあった。

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