語学を学ぶ上で、「言葉を覚えるだけではなく、その国の文化を学ばなくてはダメだ」ということがよく言われます。
これは韓国語でもまったく同様です。相手の国の文化について勉強しておかないと、なまじ言葉が通じるだけに誤解やトラブルが発生しやすくなるからです。
特にビジネスにおいては、細かなニュアンスの行き違いによる誤解が致命的な失敗を招く場合がよくあります。こうしたトラブルを防ぐためには相手の国の商習慣や常識についてもよく勉強しておく必要があります。
たとえば、韓国では初対面の人にすぐに年齢をきく習慣があります。
欧米や、欧米文化になじんだ日本では面識の浅い相手に年齢をたずねるのはマナー違反。特に女性に対してはタブーですね。ところが韓国人はたとえ1歳差でも年齢によってきびしく上下関係を決めるので、最初に相手の年齢を知っておく必要があるのです。
(同様の習慣は中国にもあって、昔の中国の指導者が訪英したとき、いきなりエリザベス女王に年齢をたずねて周囲がパニックになったという事件もありました)
韓国は儒教の影響が強く残っているため、このような「長幼の序」はいろんなシーンで発生します。たとえば年上の前では鼻をかんではいけない、タバコを吸ってはいけない、年上の人に何かを受け渡しする時は両手でやらなくてはならない。お酒の席では年下の者が先に盃に口をつけてはならない。
年上の人に勧められても2度までは辞退し、3度勧められて断るとかえって失礼なのでようやく酒を口に運ぶ…といった具合です。なお韓国には割り勘の習慣がないので、食事や飲み会の後では誰かがまとめて払う習慣があります。日本人が割り勘で払っている風景は韓国人には苦々しく思えるそうです。
お酒といえば、韓国人とビジネスをするにあたっての注意として、韓国人は宴会による接待をとても重視するということを覚えておいてください。
交渉を円滑に進めるためには多くの関係者と盛んに宴会を開くことになりますし、これを怠ると「接待もしないような会社とは取引をしない」などということにもなりかねません。酒席でのマナーもこまかく定められていて、ビジネス上の力関係と長幼の序が入り混じった複雑なものになりますから十分注意が必要です。
まず乾杯の際、相手よりもグラスを高く掲げないというマナーがあります。そして乾杯をしたらそのグラスは一気に飲み干さなくてはなりません。日本の宴会のように、ちょっとだけ口をつけてすぐグラスを置くというような作法は韓国では失礼にあたります。
そして目上の人の前でグラスをまっすぐにあおるようなことはしてはいけません。少し横をむいて飲みます。お酒を注ぐときも注がれる時も必ず両手でやらなくてはなりません。
このような習慣の大半は、実は日本でも普通で行われていたことでした。韓国ではこうした習慣を現在も大切に守り続けているのです。最初は窮屈に感じるかもしれませんが、慣れてみるとそうでもありません。