「韓流ラブストリー 恋の糸」第40話

「韓流ラブストリー 恋の糸」(スカイプが繋ぐ恋 四十話)
著者:青柳金次郎


「室長、本当に大丈夫なんですかこれ?」
セヨンがもう一度怜音に問う。しかし怜音は黙ってうなずきながら何かを自分に言い聞かすような様子でいる。
「室長!」
「……大丈夫、とにかくちょっと一人にしてくれる――」


青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第40


流石に怜音もスタッフ達の声に応えるほどの余裕はない。
(ジャンヨルが嘘をつくはずがない……、でも、なんなのこれ?)
その日の怜音はとても仕事が手に着くような状態ではなかった。そして窓の外がみかん色に変わり初め、怜音の顔をみかん色に染まりだすと怜音はフッ、と何かを思い出したように席を立ち、何か思いつめたような表情で足早に会社を後にする。
それを見たスタッフは何も言わず怜音の背中を見送る。
「室長ショックだったのよ――」
「あたりまえじゃない、私ならあの場でブチ切れて会社飛び出して男の処へ向かってるわ――」
セヨンとナヨンが心配げに話す。その時怜音はタクシーで仁川空港へと向かっていた。空港までの道中怜音はタクシーの窓から見える景色をボー、と見詰めながら何かを考えている。窓の外はもう既に日は落ちて暗くなり、ネオンが輝き始めている。空には星たちが顔を出し怜音を見詰め始めている。
(ジャンヨル……)
その頃ジャンヨルは昼間のサミンの婚約会見のことで銀座のボクデンの一室を借りて武人とミッコと三人で、真剣な表情で話し合っていた。そこへジャンヨルの携帯の着信音が鳴る。
「あぁ、怜音! エッ? 分かった。銀座のボクデンにいるから――」
「怜音から? 来てるの?」
「はい、ここに向かってます――」
「怜音さんも心配なんだろう……」
「うん、そうね――」
「それに……、おそらく怜音も気付いたのかもしれませんね、このことに……」
「まぁ、ここ最近のSKグループの動向を見ていれば分かる人は直ぐに分かるわよ――」
「SKグループも必死だからな――」
「それもあって、今日の会見の後、SKグループの株価は一気にストップ高まで値を上げた。おそらく明日もこの勢いは止まらないだろう――」
「だとするとどこまで上がってくんだろう……」
「それが問題だが、まだ他にも何か仕掛けるはずだ。婚約発表くらいのネタじゃ精々一週間上がり続けるのがいいところだからな――」
「しかしSKグーループも必死ね、とことんうちを利用して、少しでもM&Aを仕掛けられた時の条件を有利にしようと考えてるのね――」


青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第40


「ただここまでやられると、どうしてもほかに何か隠していることがあるんじゃないのかなぁ、と勘繰りたくなるよな――」
武人が言うと、ジャンヨルがそれにこたえる。
「本当ですね。とんでもないことが隠されていたりしてね! うちの会社も調査はしているが、その調査に引っかからないようなトリックがあるかもしれません――」
「だとしたら後からとんでもないことが発覚することになるんじゃない。もしそうだとすればサムスン全体に大きな影響を与えるようなことになるわよ――」
電話を切って三十分ほどで怜音はボクデンに到着した。三人は待ちかねた表情で怜音を迎える。
「怜音お疲れ様!」
「お疲れ様ですミッコ先輩!」
「でどうなの? 何か掴んだの? SKグループについて……」
「全てではないですけど――」
「で、何?」
「SKグループは次のタイミングでラバーズの新たな婚活アプリ戦略をそのままそっくり乗っ取って発表するつもりです――」
「そんな馬鹿なことができる訳ないじゃない……」
「それがうちのスタッフの一人がサミンさんと繋がる人物にラバーズ内部の情報を流していたんです――」
「誰?」
「フンニです。フンニは弟のイルリョンにラバーズソウルの情報をSKグループに流していたんです――」
「そうだったのか、我が社のアプリ開発事業に目をつけていたのかぁ、しかしあれは……」
「そうなんです。おそらくSKグループはまだそこに気が付いていないのだと思います――」
「だとしたら怜音さん、早く教えてやらないとSKグループは豪いことになってしまうぞ!」
「そうなんです。でもどうすればいいのか、私一人の一存では決められなかったので、こうして日本に帰って来たのです」
「…………」
四人は顔を見合わせながら黙り込んだ。
「いや、このまま放っておきましょう。散々やりたい放題している相手に情けをかける必要はないでしょう」
「しかしジャンヨル、SKグループはかなりの打撃を受けることになる、そうなればM&Aを仕掛けているサムスン事態にとっても大きな悪影響を及ぼすことになるかもしれないぞ――」
「大丈夫です僕に考えがあります――」
ジャンヨルは一言そういうとニンマリと笑みを浮かべた。


青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第40


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