「韓流ラブストリー 恋の糸」第21話

「韓流ラブストリー 恋の糸」(スカイプが繋ぐ恋 二十一話)
著者:青柳金次郎


「ハァ~疲れた、今日の打ち合わせは中身濃かったなぁ」
「そうですね、ギュウギュウ詰めって感じでしたね」
怜音はミッコの仕草、表情になんとなくいつものミッコとは違う何かを感じる。
「さぁ、怜音飲みに行こう。みんなに連絡して現地集合ってことで、このまま私達も飲み屋に向けて直行しよう!」
「ハイ、連絡します」
ミッコは笑顔でソウルの街に吹く秋風を切るようにして街路を進んでゆく、足元に散らばる落ち葉たちが風に吹かれてミッコの後ろで舞っている。
二人は昨日の店に入った。まだ他のスタッフ着いていないようだ。
「怜音、取り敢えず二人で乾杯しようかぁ?」
「エッ、みんな待たないんですかぁ?」
「う~ん、飲みたいの、何だか……」
この時怜音は何時もなら必ず皆がそろう間で乾杯しないミッコが飲みたいといった時点でミッコに何かあったのだと思った。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第21


「乾杯! フゥ~アァ、美味しい。最高だな……、怜音、最近私、嫌な夢ばかり見るの……」
「エッ、どんな夢ですか?」
(珍しいなぁミッコ先輩がネガティブな話をするなんて……)
あきらかに何時もと違うミッコに怜音は一抹の不安を感じた。しかしその答えがミッコの心の中にある以上どうする事も出来なかった。
そこへ他のスタッフ達が遅れて合流する。
「来たなぁ、お疲れさん! みんな、こっちこっち、遅いから先にやってるぞ! 」
遅れてきた三人も席につくなりハイトビールを注文した。そして注文したビールが手元に来ると一気にジョッキに泡立つハイトビールを飲み干す。
「ハァ~、やっぱり仕事の後のこの一杯は最高だな!」
「セヨン、大丈夫なの? 昨日あんなに飲んだのに二日酔いじゃないの……」
「大丈夫です。ここにいる三人は酒も仕事だし、その酒が好きで好きでしょうがないんですから。ねぇ、フンニ?」
「ウン、僕もこの仕事は大好きです。仕事の後のこの仕事、やめられませんよ、なぁ、ナヨン!」
「えぇ、最高です。この一杯があるから仕事していると言ってもいいくらいです。私!」
「社長、ナヨンはこの三人の中で一番お酒が強いんです。私達二人も決して弱くはないんですけどナヨンにはとてもかなわないんです」
「ヨシ! それじゃ今夜は誰が一番強いか勝負しよう。私達もかなり強いわよぉ――」
怜音は何時もになくはしゃいで見えるミッコの姿に、何時もとは全く違う負のオーラを感じていた。
三時間余りで今日の飲み会は終わった。それはいつもと違うミッコのお酒を飲むペースの結果、本人がつぶれてしまったからだった。
三人のスタッフもミッコの姿をいたわるように声を掛ける。ミッコは既に意識が無い。
フンニが気遣いミッコを背負う。
「社長、大丈夫ですか?」
「…………」
幸い怜音のマンションに近いところで飲んでいたためフンニがミッコを背負い、セヨンとナヨンの二人がミッコの荷物を持って後に続く、三人は怜音の部屋までミッコを送り届けてくれた。
「ありがとう、後は私がやるからこれで上がってちょうだい。皆ありがとうね……」
怜音は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しミッコの元へと向かった。
ふっと目に入る点滅する留守電ランプ、ジャンヨルからの電話だと分かっていたが今はソファーに沈むミッコのことが一番だった。そのミッコの姿は尋常でないほどに落ち込んでいる。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第21


「ミッコ先輩、お水です。一体どうしたんですか?ミッコ先輩らしくないでよ」
「……ごめん、怜音……、私、離婚するかも……」
「エッ! 何故ですかぁ……、あんなに仲の良かったのに……」
いきなり聞かされるミッコの近況に怜音はどう反応していいのか分からない。するとミッコは勝手に話し出す。
「私は彼がちゃんと私の仕事の事を十分理解してくれていると思ってたんだけど……、そうじゃなかったみたいなの、ずっと我慢していたみたい……」
「…………」
「子どもは預かるから仕事に打ち込んでほしい、って……」
「そんなぁ……、別れちゃ駄目ですよ。ミッコ先輩!」
「私だってそうしたい。だけどこんなに大きくなった会社を放りだす事はできない……」
怜音は考えたが答えは出てこない。黙り込む二人が向かい合っている。刻々と流れていく時に抗うことすらできない。
「怜音、私……、別れるよ。全く予期してなかったわけじゃないから、仕事仕事で家族を顧みることをしてこなかった罰なのよ。きっとね……」
「先輩……」
結婚すらしていない怜音には夫婦の事をとやかく言えるはずもなく、ただただミッコの傍にいて話を聞いてやる事しかできなかった。
二人は気が付くと眠っていた。怜音はミッコを抱きかかえるようにしてソファーに深くもたれ掛かったまま、外は仄明るくなっている。
そんな時、ミッコの携帯が何かを必死に伝えるように鳴り叫んだ。
ミッコは気怠そうに携帯のナンバーをのぞき込む。
「……ハイもしもし? エッどうして? それで大丈夫なの? 分かった、すぐに帰る!」
「どうかしたんですか? ミッコ先輩――」
「子共が……」
突然ミッコに伝えられたこととは…… 

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第21



前話を見る

この記事を書いたのは……

support事務局先生

>> support事務局先生の紹介ページへ
▼ この記事を読んだ人は